2019/06/27
途方もなく白い世界は暗闇にいるのと同じかもしれない。 何が天で地か分からなくなり、何処からが生で何処からが死なのかの境も亡くなった様に一瞬思う。 そう一瞬だ。 次の瞬間にはそれを忘れて必死に吹き下ろしてくる風に向かって抵抗して歩く。 「あかね~っ!!」 大きく叫んだが風と雪に吸い込まれる様におれの声は遮断される。...
2019/05/19
「……ん?」 額に乗せていたタオルをそっとどかして早乙女先生が目を覚ます。 私はほっとしながらテーブルの上に氷を入れた水のグラスを置いた。 「気が付きましたか」 「……天道?」 「先生倒れてたんです。床の上で」 「ああ……なんでだっけ?」 まだ意識がぼんやりとしているのか早乙女先生は焦点の合わない目をしている。 「それは……えーと……」...
らんま1/2 · 2019/01/31
「真田くんて、あかねのお姉さん夫婦のカフェでバイトしてたのね~」 教室で皆でお弁当をひとしきり食べた後に、その中の一人が私に話題を振ってきた。 「うん、だから私も真田くんは会ったばかりで詳しくは知らないの」 「真田くんは住み込みなんでしょう?あかねは同居してるって事?」...
2019/01/25
日曜日のお昼。 たまには自分でお昼ご飯を作ってみようと、おにぎりに挑戦してみた。 昔からお料理はまともにした事がない。 けれどお姉ちゃんも亡くなったお母さんもお料理上手。 そんな訳で私には無駄な自信があった。 きっとその遺伝子は私にも受け継がれている筈! 張り切って炊きたてのご飯を杓文字ですくい手に乗せる。 「熱っ!?」...
2019/01/22
東風さんの自宅近くに道場があるとは聞いていたけれど、なかなか立派な所だった。 しかも便利なのは私たちが住むカフェからも近いということだ。 「大学のOB何人かで共同出資したんだよ」 胴着で出迎えてくれた東風さんがニッコリと私に笑いかけてくれる。 うちの実家の古い道場より真新しくて広い。 物珍しく見回していると、そこに胴着姿の真之介くんがいた。...
2019/01/13
私たちが食事を終える頃には、真之介くんは部屋に戻っていた。 食器を洗い終えて、テレビを見るために温かいミルクティーを入れてソファに座る。 今日は医療ドラマを観るつもりでいたのだけれど、全然集中が出来ない。 倉見先輩はけして弱い人ではなかった。 気を抜いてかかれば私も簡単に投げ飛ばされてしまうくらいの技量と力のある人で。...
2019/01/10
校内の武道館は、思っていた以上に立派だった。 「あなたが見学の天道さん?私が部長の倉見佳奈よ。よろしく」 倉見佳奈と名乗った胴着姿のその人は、鋭い目をしてはいたけれどすっきりと整った顔立ちで、おでこから長い髪を全て後ろに束ねて纏めていた。 「一年の天道あかねです。よろしくお願いします」...
2019/01/05
すっかり早乙女乱馬の存在を忘れてドラマに集中している時だった。 私の座っているソファーの隣の隙間に早乙女乱馬が突然どかりと座った。 自分の夕飯を乗せたボードをテーブルに置くと、ソファーの中央に座ったのだ。 その拍子に深く沈んだシートのせいで、ソファーの上で膝を抱えていた私はそのまま早乙女乱馬の方へ滑った。 ペタリ。...
2019/01/03
「ねえ天道さんて何で真田くんと一緒に登校してたの?知り合い?」 クラスの女子の女の子たちに、お昼を一緒にと誘われて一番最初に訊かれたのはこんなことだった。 しまった、と思う。 早乙女乱馬と同居している事は全て隠すと理解しているけれど、真之介くんの事はどうしたらいいんだろう? ただ真之介くんと同居してると発言する事自体危険な気がする。...
2019/01/03
朝目覚めてダイニングに行くと、お姉ちゃんが焼き立てのパンを持ってきてくれた。 「乱馬くんといきなり裸の遭遇したんですって?仲良しさんね」 ぶっとカフェラテを吹き出しそうになる。 「お姉ちゃんっ!や、止めてよ!!」 その時玄関とは反対の廊下から真之介くんが出てきた。 ブラウンのブレザーの制服姿だ。...

さらに表示する