「格闘、ラブ、コメディー、ファミリー、学園、微エロ、変人だらけのカオス物語である。」
上記のサブタイトルを書いて改めて思ったのが「らんま1/2」とは非常に色んな要素を含んだ欲張りな物語であるという事だ。
同作者の似た系統の物として「うる星やつら」がその前に存在しているが、ギャグの系統やパターンは継ぎながらも、主人公が男性であっても理由があり女体化もするというのは、当時としてはかなり珍しいものであった。
(「うる星やつら」自体も別の種類で珍しいものであるが、そこは論点がズレて行くので省かせて頂く)
そういう意味で現在の萌えヲタ文化の原点の一端は、原作者・高橋留美子さんにも繋がるし「らんま1/2」にも繋がるだろう。
そして上記のサブタイトルに話は戻るのだが「これだけ色んな要素あったらどこに目を置いていいのか分からない」「詰め込み過ぎじゃね?」というご意見もあるだろう。
ここに「らんま1/2」の作品としてのメリットとデメリットがある。
とにかくキャラクターも要素も豊富な分だけ物語はカオスだ。
作者が意図せずとっちらかしているのではなく、作者が意図してとっちらかしている。
しかも豊富なキャラクターにはそれぞれの性格の癖や特徴がある。
その中には現代社会の流れにあからさまに反していたり、性格に難のあるキャラクターも多数居る。
それが罪悪感を煽ってもう受け付けないという今の時代の流れもあるかもしれない。
ただそこについてはこの一言に尽きる。
「これは架空の物語である」
そしてこの一言は「らんま1/2」だけではなく、漫画ゲームに限らず文学、ドラマ、映画など全ての創作物に言えるという事だ。
どの作品も現実世界に与える影響は0でもなく100でもない。
ただ大抵の人はそれを架空の物語であると認識するのが普通で、中には過剰に反応してしまう人もいる。
というのを深く論じるとまた論点がズレるので話を「らんま」に戻す。
この「らんま1/2」においてはキャラクターはそれぞれ長所だけでなく欠点を持ち合わせており、時にその欠点の描写がとても激しい。
どのキャラクターにも性格の欠点をあげつらおうとしたらキリがない。
時にそう見えない常識人のように見えるキャラクターもいるように思えるが、深くそのキャラだけを見ていたら実はそうでもない。
登場回数が多い少ない描写が多い少ないはあれど、何かしら変な言動をしているのが、この作品の特徴だ。
そしてこの変な言動により、混乱や偶然一致してしまった有り得ない事により「おかしみ」「面白さ」が出るのが「らんま1/2」の物語だ。
キャラクターの性格に難がないとほぼ何も起こらない物語だと言ってもいい。
ハマる人は凄いハマるけど、全然ハマらない人もいる。
そもそも面白さが全く理解出来ない人もいる。
そこに差が激しくあるのは以上のような理由からも理解出来る。
いくら物語であれ混沌や混乱を楽しめない人もいる。
そしてこれはコメディーと銘うっているものには付き物であるとも思う。
ツボが合う合わないがある。
合わないものを無理して合わせる必要もない。
ただ「らんま1/2」に関して言えば、コメディーだけの要素で終わらない点が強味で魅力でもある。
コメディー部分にツボが合わなくても、キャラの関係性に萌える人もいる。
また作品全体に興味まではなくても、このキャラクターだけは好きという人もいる。
どこかで無限に続く家族団らんに惹かれる人もいる。
単に露出を楽しみにしていた人もいるかもしれない。
格闘という物においてはギャグ要素を強く打ち出しているので、技もふざけたものが多いのだが、格闘シーンの描き方においてこの原作者の表現力は秀逸であり、その後の作品「犬夜叉」にも繋がっているのではないか。
とにかく、カオスな分だけどこに「好き」の比重を置いても自由だ。
そしてこの原作者は、たった一コマの動きや表情だけでキャラクターの感情を表現するのがとても上手い。一コマからでも充分キャラの特徴や感情が伝わるのが面白い。
ひとつでも好きな部分があればそれでいい。
それが膨らめばより楽しい。
どのエピソードでも、どのキャラクターでも、どのカップリングでも。
自由に好きでいていい。
そしてこの原作者はそういう空白を随所にもたせてくれている様に個人的には感じている。
コメディーに関しては人間関係を深く描き過ぎない事で、こちらが想像する自由度を高めてくれている。
原作者にとって良いか悪いかは別として、想像の余地がある分だけ「らんま1/2」は非常に二次創作をし易い作品でもある。
またキャラクターの見た目や服装にあからさまな特徴も多いので、コスプレをする事にもとても向いている作品である。
それが原作が終了して何十年も経った今でも、ファンの存在が消えずに一定数いるひとつの理由であるとも思う。
らんま1/2は「架空の物語として罪悪感は感じずに、好きなキャラ、好きなエピソード」を自由に楽しもう。
というのが私個人のひとつの提案です。