『あの天道あかねが、一年後におれと二人きりで観覧車に乗ってくれるぞ』と入学式当日のおれに言ってやったら、どうなるだろう。
きっと滅茶苦茶テンション上がったろうな。
「あかね、顔動かさないで目だけで見てみろよ」
「え?」
目の前の席に大人しく座るあかねは、無防備に小首を傾げた。
それは脳内変換すれば恋人にする仕草のようにも見えて、ああ、本当に可愛いなあとうっとりしたくなる気持ちと、乱馬の馬鹿野郎と嫉妬する気持ちが同時に湧いて出る。
「顔はおれの方向いたままでさ、目だけでメリーゴーラウンドの方見てみろよ」
素直なあかねは、そのまま目だけをメリーゴーラウンドの方に向ける。
ゆっくりと上昇していく観覧車から見えるメリーゴーラウンドの直ぐ近くには、遠くからでも鋭い眼光をしていると分かる乱馬が立ってこちらを睨んでいた。
「・・・あ・・・」
「すげー顔して見てるな、あいつ」
おれはつい、ぷっとつい吹き出してしまう。
「口では散々どうでもいいみたいな事言ってたくせにな。全然良くねえって顔してるぞ」
「ホントに・・・素直じゃないんだから」
呆れた様に言いながらもどこか嬉しそうに頬を染めたあかねは、やっぱり可愛かった。
そもそもおれとあかねが二人きりで観覧車に乗る発端となったのは乱馬だ。
一泊二日の自立教育旅行。
風鈴館高校では毎年一度は開催されている行事だ。
生徒達がクラス毎に候補にある目的地と宿泊地を決めて、タイムテーブル等も全て自分たちで決めるという自立教育の泊りがけの行事。
一年F組は、遊園地とその近くのホテルに宿泊が決まった。
ホテルの近くには大きな湖もあるので、二日目はその湖畔の方でオリエンテーリングをする予定だ。
一日目の今日は思い切り遊園地で遊べる事になっていた。
フリーパスで乗り物も乗り放題だ。
おかげでさっきまで乱馬と大介と連続でゴーカートを乗り回してクラッシュしまくり、無駄にコーヒーカップを高速回転し過ぎて大介が脱落。
乱馬と連続でジェットコースターに乗るのも飽きて広場の方に来たら、あかねとゆかとさゆり、更に右京と出くわした。
観覧車に乗るという女子連中に誘われて、二人乗りだから、やはり乱馬とあかねは一緒だろうと話題になり、それに過剰に反発したのが乱馬と右京だった。
「な、な、なんでおれが観覧車なんかと一緒にあかねに乗んなきゃなんねえんだよっ!」
「そうや!そうや!!それにうちかて乱ちゃんの許嫁なんやで!」
「別にあたしだってあんたと乗りたいなんて思ってないわよっ」
乱馬は完全に照れ臭さからパニ食ってるのがダダ洩れしていた。
顔を真っ赤にしながら言い間違えてる事にあかねと右京以外の皆が気が付いているのに、何故この三人は気が付いていないのか。
そういうとこが話を毎度ややこしくしているような気もするのだが、おれたちクラスメートはこの一年ですっかりそれに慣れていた。
「右京と乗ればいいじゃないっ」
「おーおー、そうすっかな」
「あかねちゃんがそう言うなら遠慮なく。うちと一緒に乗ろうや♪なぁ乱ちゃーん」
「勝手にすればっ」
「そ、そもそもおれはっ・・・観覧車みてーな退屈な乗り物が嫌いなんだっ!!」
・・・一応乱馬も少しは学んだのか。
ここで右京と二人きりで乗った後のあかねとの関係を考えて、そう言ったというのは乱馬としてはなかなか上出来なのかもしれない。
「そうなんや。そんなら二人きりでお化け屋敷いこっか」
「へっ?や、あのな、そのうっちゃん・・・」
「真っ暗なとこで二人きり。乱ちゃんうちに抱き着き放題やで、やらしいなもう~っ!」
腕を組む右京のその言葉で顔を赤くしてたじたじになる乱馬と、あからさまに不機嫌そうな顔をするあかね。
ふっ。相変わらず詰めの甘い奴だな。
そして相変わらず無意味にモテるのがムカつくな。
や、けして無意味じゃないんだけど。
かなり強い奴だしそれなりにイケメンではあるんだけど、モテているのに何かが圧倒的に残念なのだ。
それは多分、こういう時の女性さばきの下手さ加減というか。
「ぼくはあかねにぞっこんラブずっきゅん野郎です」って本音もちゃんと言えねえ奴だからなー。
そこ言い切った方が実は男としての株が上がるだなんて思いもよらねえんだろうなコイツ。
これが年上女子だったら「可愛い」にもなるのかもしれないが、同年代の女子からしたら「フラフラして最低!!」と思われるのも仕方ない。
要するに本人のキャパシティー越えてるのに何故かモテているのだ。
と思っていたら本当にちょっと腹立たしくなってきた。
なんでこんな野郎がモテてんだ?
って本人にも散々言っているが「そりゃおめえ、おれが良い男だからだろ」とか決め顔でナルシストしやがるので、いい加減本人にぼやくのも馬鹿馬鹿しい。
で、ふと考えた。
丁度良く大介も今脱落中だし、人数的にもピッタリだ。
これは普段おれらにナルシストかまして、あかねには素直になれず、右京たちには曖昧な態度を取り続ける乱馬に、ちょっとし返してやる絶好のチャンスじゃないか。
「そっかー。乱馬が右京とお化け屋敷行くなら、おれがあかねと二人で観覧車乗るよ。いいだろ、あかね?」
「んなっ!?」
右京に腕を組まれたままの乱馬は、それを聞いた途端にあからさまに動揺して叫んだ。
「・・・そうね。私はいいわよ」
「おい!あかねっ!お前はいつからそういう尻軽に・・・!!」
言われたあかねは「はあ!?」とその言葉に余計に逆上したようだ。
そりゃそうだ。
他の女と腕組んでる奴にそれは言われたくないだろう。
「もういい。ひろし、行こうっ」
おれとしてはラッキーデートだ。
しかも怒りに任せたあかねはおれの手をぐいっと引っ張った。
これはもう、おれ的にはかなりテンションが上がるハプニング。
「ああっ!お前っ!!こら!!」
「うん。じゃあ乱馬、おれ行ってくるから右京とゆっくりなー」
「二人も楽しんで来てな~!」
嬉しそうに送り出す右京に向かってにぎにぎと手を振りながら、焦る乱馬に背中を向けた。
「おい!!お前な!あかねに何かしやがったら・・・」
しやがったらなんだ?
と思うがそれ以上言い切れずもごもごするのが奴の弱点だ。
「じゃあ、あたしたちは淋しく女子二人で乗りますかぁ、ゆか」
「そしよっかぁ、さゆり」
こういうやりとりに慣れきっているさゆりとゆかも二人で観覧車の方へ向かうようだった。
そうしておれは今、風鈴館高校の百合の花(九能センパイの受け売りだが)天道あかねと観覧車に二人きりで乗っている。
けれど乱馬はどう右京を振り切ったのか知らないが、一人でメリーゴーラウンドの近くで仁王立ちして、じりじりとこちらを睨んでいた。
そこまで執着するなら、おれを振り切るくらいの度胸見せろよ、と思いわざと煽るように乱馬に向かって舌を出す。
「ちょっとあいつの事からかってやるか」
「え?」
「あかね、不安にさせないように先に言っとくけど。入学した時からさ、おれずっとあかねのファンだから」
「ファン、て」
同級生に向かって「ファン」と言うおれを、可笑しく思ったのかくすりと笑われた。
「憧れの存在って言うのかな。まあ簡単に言えばファンてことなんだ」
「ひろしも分かってるでしょう。私凶暴で不器用で、あんまり自分で認めたくないけど、ほぼ乱馬の言う通りなの」
「うん、もちろんよーく知ってるよ」
言い切って深く頷いたら「そこフォローなし?」とあかねに突っ込まれて互いに笑う。
「入学してすぐの頃さ、あかね交際を迫って群がる男子を片っ端からなぎ倒してただろ」
「そ、そうね。なぎ倒してたわね」
「あれ見ておれさ、虫も殺せないような顔の綺麗な子なのに、格好良いなあって思ってさ」
真っ直ぐにおれを見ていたあかねの顔が急激に赤くなった。
「・・・もしかして照れてくれてる?」
「だ、だって、あまり正面切ってそう誰かに褒められた事ないし・・・」
「ははは、確かにな。乱馬は口悪いからなあ」
あいつの愛情表現は本当に歪んでるんだと、下で怖い顔をしてこのゴンドラだけを睨み続けているその悪友に向かって笑顔で手を振る。
もちろん奴は手を振り返すどころか、余計に憤慨するように顔を赤くして何かこちらに向かって叫んでいた。
「おれがあかねファンなのはさ、あいつも知ってるから。だからあんな焦ってんだよ」
「え・・・そうなの?」
「うん。男同士でそんな話もするからさ」
中学の頃から別クラスでも同じ学校だった大介と早々に仲良くなったおれは「あの子すげえ綺麗だな」と、同じクラスになった髪の長い綺麗な女の子の名前を知る為に、名簿を速攻チェックしていた。
『天道あかね』
凛々しくもあり、上品さも感じる名前だった。
確かに凛とした一輪の花のような背筋の伸びた美しい後ろ姿は、簡単には近づけなさそうな気高さがあった。
けれど入学してから間もなく、校門前でたまたま大介と出くわしたおれは、共に天道あかねのとんでもない真の姿を見る事となった。
虫も殺せなさそうな可憐でか弱そうな少女が、一気にたむろして群がってきた男たちを、華麗な格闘技の動きで次から次へとなぎ倒して行ったのだ。
「うわ、ありゃ素人じゃねえな」
「めちゃくちゃ可愛いのに・・・怖え・・・」
「そうか?すっげー面白いじゃん。おれ余計ファンになったわ」
大介はおれをチラリと見て、ぼやく。
「お前も大概・・・女好きだよなー」
「お前もなー」
結局何だかんだ言いながらも、おれと大介はそのまま『天道あかね』のファンであり続けているんだ。
早乙女乱馬の出現により、彼女がただの『天道あかね』ではなく『早乙女乱馬の許嫁の一人・天道あかね』になった今も。
で、クラスメートであり悪友としてその早乙女乱馬の心の居所は、誰にあるのかは明らかだった。
「おれがあかねのファンだから、自分の居ない隙に手出されるんじゃねえかと思って心配してんだよ、あいつ」
「・・・そうなの?」
あかねは照れながらも乱馬の事になると少し懐疑的だ。
そりゃあ普段から乱馬のあかねへの態度の表面だけを見て居たら、そうなってしまうのも仕方ないか。
「そそ。だからちょっと乱馬の事からかってやろうぜ。けどおれおあかねのファンだからさ。ファンはわきまえるのがエチケットだ。あかねに本気で変な事したりしないから安心してくれ。な」
ふっとあかねが笑う。
ローズピンクのショート丈のコートとクリーム色の短いフレアスカート。
首にはクリーム色のマフラーを巻き付けていて、色合いの柔らかさと笑顔の柔らかさがとても調和している。
きっと乱馬に見せる為に気合いを入れて可愛い服装にしたんだろう。
なのにあのバカは気が付いていても言えないのか、気が付いてもいないのか。
「ひろしは大事なクラスメートだもの。そんな心配してないわ」
「うん、ならいい」
二人でにっと笑う。
「私はどうしたらいいの?」
「おれと抱き合ってる風に見せようか」
「風って?」
「同時にゆっくり立って、真ん中で重なるように抱き合ってる振りして見せるんだよ。腕だけお前に回すけどいい?」
「うん」
「それであいつがどんな顔するか、あかね見てろよ」
「・・・わかった」
「じゃあゆっくり立って。行くぞ」
おれとあかねはゴンドラの中でゆっくりと立つと二人で左右に少しずつずれて中心で重なるように見せた。
そうして、おれは腕だけをあかねに回す。
横から見て居ればきっと抱き合ってるように見えるだろう。
そうして少しの間そのままで居た。
「あいつ、今どんな顔してる?」
「・・・・・・」
おれの方からは見る事が出来ないので訊ねてみたが、あかねは何も答えなかった。
きっとそれが答えなんだろう。
「もう十分か。座ろう」
「・・・う、うん」
元の位置にゆっくりと戻って座りまた向かい合った時のあかねの顔は、何だか申し訳なさそうに俯いていた。
口元がマフラーに埋まっている姿がとても可愛らしい。
「戻ったらさ、あかねの言いたいタイミングでネタバラししてやれよ」
「で、でもひろしはそれでいいの?」
「ん?」
「乱馬と・・・大丈夫?」
「全然、大丈夫。普段あいつに色々やきもきさせられてんだろ?たまにはこっちがやきもきさせてやれよ。それぐらいしねーとあいつ、なっかなか本音見せねえからな」
「・・・ありがとう」
「おれは役得だ。嘘でもあかねと抱き合う振り出来たしな」
にやりとあかねに笑い掛けて窓の向こうの風景を見た。
ゴンドラはそろそろ頂点に到達して、それを過ぎようとしている頃だった。
東京とはまるで違う広大な山と自然の見える光景は、のんびりとした田舎町の田園も広がって見える。
冬でそれらは煤けた色をしているが、その分冬の透き通った空が青く綺麗だった。
「おれいつか、こういうとこに住むのもいいな~」
「そうなの?」
「東京好きだから直ぐじゃねえよ。散々遊び倒した後に嫁さんでも貰ったら、こういう所もいいかもな」
そうしていつかは喧騒や利便性から少し離れてのんびり暮らすんだ。
どうせなら人生で色んな楽しみ方をしてみたい。
色んな自分を知りたい。
「散々遊び倒すんだ?」
「うん、若いうちはそのつもり」
呆れたように笑うあかね。
「まあ乱馬みてーに先に出会っちまったらそれはそれで、だけどな」
「え?」
そんな風に先を想像していたとしたって、結局先の事なんか誰も分からない。
乱馬みたいに今の年でもう離れられない異性と出会ってしまう事もある。
それはそれで凄く幸せだとも思う。
大変だとも思うけど。
まだはっきりと輪郭が見えないおれたちの将来は、霞みがかかっているようにも見えるし、無限に広がっている海のようにも見える。
「・・・ひろしは、大人になったらモテそうだね」
あかねのその言葉におれはぶっとなる。
「今じゃないのか。そこは大人にならないと駄目か」
あかねはふふふと楽しそうに笑う。
「いいじゃない。モテ期が先にある方が将来楽しみで」
「複雑だな・・・でもまあやっぱり」
「ん?」
「光栄ですよ、風鈴館高校の白百合・天道あかねさんに言われるのは」
「や、やめてよそれっ」
必死で嫌がるあかねが可愛くて、笑っていたらもうゴンドラは地上まで辿り着いていた。
降り口のすぐ近くには、怒りでプルプルと震えている乱馬の姿。
「嫉妬深いなあ、相変わらず」
おれはあかねの手をわざと取ってゴンドラから降りた。
「お、お前ら!!一体何のつもりだ・・・!?」
降り口のスロープを下りる所から張り付いてくる乱馬は、嫉妬に怒り狂う形相だ。
「何がって、お前が右京とデートしてる間にこっちもデートだよ。なあ、あかね」
「う、うん」
「何がデートだ馬鹿野郎っ!!う、上の方でお前ら何してやがった!」
「気になるならこっちこいよ教えてやる」
と言ってあかねから手を離すと、乱馬は鼻息も荒くおれの方へ付いてきた。
本当にこいつ顔には全面的に感情が出るから面白い。
そんな乱馬の首をぐいっと掴んでおれの方に引き寄せる。
「命短し恋せよこの野郎!!」
「・・・・・・は?」
ぽかんとする乱馬から離れて、おれはニカッと笑った。
「そんなに知りたきゃあかねに訊けよ」
ぐぬぬと握った拳を強く握っているが、それをおれに食らわす事が出来ないのをおれは知っている。
おれと大介を本気で怒らせたら、あいつのあかねに知られたくはない様々をバラされる恐怖があるからだ。
「あかね、楽しいデートをありがとう。一生の思い出だ」
少し後ろでそんなやりとりを戸惑い気味に見ていたあかねは、おれに向かって柔らかく笑った。
「こちらこそ」
そのおれたちの様子を必死で交互に見る乱馬の間抜けな怒り顔。
もういっそ子でも先になして事後承諾でいいんじゃねえか、こういう奴は。
その方がいっそ平和に落ち着くかもしれない。
背を向けた二人から聞こえて来た会話。
「ねえ乱馬・・・」
「なんだよ!!」
「観覧車。今から一緒に乗ってくれる?」
チラリと振り返れば、乱馬のコートの端を引っ張って俯くあかねの姿。
「・・・べ、別にいーけど」
いいんかーーーーいっ!!
誰だよ「観覧車が退屈だ」とか嫌がってた奴は。
本当に馬鹿だ。
あいつは馬鹿野郎だ。
けれど憎めない馬鹿で。
実はもの凄いあかね馬鹿でもある。
あれは将来、あかねにすっかり上手に扱われるタイプだなー。
まあそれはそれで・・・
滅茶苦茶幸せじゃねえか馬鹿野郎!!
森の様になっている遊歩道を歩きながら腹立たしくなる。
重なる枝の隙間から見える空。
そうしてぽかんとする。
けしてしっかり抱き合ったわけでもないのに、至近距離で感じたあかねはほんのりと何かの甘い匂いがして、腕を回した肩は華奢で、とても格闘をやっているようには思えなかった。
あの華奢な身体で、色々なものに真っ直ぐに立ち向かって行く強さが格好良いと思ってた。
その強さと近くで感じる儚さが相反していて、もう一生このままでいいのになとぐらりと揺れたんだ。
――止まれ、観覧車。
どこかでそう祈ったが観覧車は止まらずに、最後までスムーズに下りてきてしまった。
まあ、それがおれの運命か。
「ひろしっ」
ぼんやり立ち止まっていたら誰かに呼ばれた。
振り返るとさゆりがひとりで立っている。
「ん?何だよ」
「・・・あのさあ、ゆかが大介心配して様子見に行っちゃったんだけど」
「あ・・・あいつの事すっかり忘れてた」
「それで私一人になっちゃったから、何か一緒に乗らない?」
さゆりは特に顔を赤くもせずにそれをさらりと言う。
「うん、いいよ。今度はお前とデートすっか」
「デートってあんたねっ。そうじゃないからっ。ほんとチャラい」
「チャラいっすか」
「チャラいわよ」
「チャラい男と手は繋ぎますか?」
「繋ぎませんよ!ジェットコースター行くからね」
「またぁ?さっき乱馬と散々・・・」
うへえっとなるおれの服の袖を引っ張ってさゆりは言った。
「私はまだ乗り足りないの!ホラ行くよっ」
ゆらゆらと揺れるゆかのポニーテールを見つめながら、これはこれで良い眺めと思う自分は、やはりまだまだ未熟なのだなと思った。
まだ何もない。
だからこそ、これからなんだ。
終わり。
・あとがき・
飄々と場面を突っ込み、あかねファンとして乱馬に時にはやっかみ、それでも三人で楽しそうにいるアニメの雰囲気が好きでした。ひろしと大介、ゆかとさゆり。そして右京も。乱馬とあかねの同級生として、これからも自分の二次創作の中では書いて行きたいメンバーです。辻谷耕史さん、ありがとうございました。