たとえば二人、公園で①


 

東京の人は冷たいって噂は本当だった。

 

 

先ず凄い無表情で町を早い速度で移動している。

 

道を聞こうと声を掛けようとしたら、まだ何も伝えていないのに手で制されて立ち去られた。

 

それでも何度か声を掛けてみたけれど、どの人も「ここら辺に住んで居ないから分からない」と返事が返ってきた。

 

ここら辺の事が分かる人なんて存在しないのだろうか。

 

私は迷いに迷って吉祥寺駅周辺をぐるぐると徘徊し、いつの間にか公園に迷い込んでいた。

 

 

方向音痴ではない自信はあった筈だ。

 

だから正直お父さんの渡してくれた簡単な地図もきちんと確認していなかった。

 

自信満々で上京したのにこの体たらく。

 

 

秋風は嘲笑うかのように私の頬に冷たく刺さった。

 

 

 

 

とりあえず元気を出そう。

 

 

緑の沼みたいな透明度の低い公園の池を眺めながら気持ちを奮い起たせる。

 

そうして池を囲むようにぐるりとある柵の上に私は乗った。

 

 

その瞬間だった。

 

 

ぐいっと後ろに強く引っ張られて、何かに身体を受け止められる。

 

ふと振り返ればそこには妙にカラフルなニットを編み込んだ耳まで隠れて両サイドにボンボンの付いた帽子を深く被り、小洒落たフレームの眼鏡を着けたチャラそうな男性の顔。

 

私はその男性にくるまれるように抱き止められていて、ぽかんとする。

 

 

「こんなとこ立ってたら危ねーだろうが!」

 

 

その一言でナンパではないらしい事は分かった。

 

 

「大丈夫です。私バランス感覚良いから」

 

「は?池に飛び込もうとしてたんじゃねえのか?」

 

「まさか。こんな汚れた池に?頼まれたって嫌です」

 

 

ハキハキと答える私に、その人は拍子抜けしたようだった。

 

私からそっと離れる。

 

 

「何だ。てっきり自殺願望者かと」

 

「ここに落ちたって死にはしないでしょう?あ……でも死ぬかも」

 

ぶっとその人が吹き出した。

 

 

「どっちなんだよ?」

 

「や、普通の人は死なないだろうけど。私泳げないから」

 

「は?それでよくそんな危険な真似を」

 

 

 

「……忘れてた。泳げないこと」

 

 

 

ぽかんとした間が出来る。

 

間の抜けた空気に見つめあって吹き出してしまった。

 

 

 

 

「で、三時間も駅周辺さ迷ってたのか?」

 

 

私は男性の言葉に頷きだけで答える。

 

口に入れたパスタが美味しすぎて声が出なかったからだ。

 

 

あの後道を訪ねようとした男性の前でタイミング悪くお腹がぐうっと盛大に鳴った為に、私はここに案内して貰ったのだ。

 

1000円以内でお昼を食べられる場所はありませんかと訊ねて。

 

 

それにしても。

 

こんな美味しいパスタとタピオカミルクティーがサラダセットでランチ750円て何。

 

 

 

美味しすぎるし安過ぎる。

 

東京って凄い、と呟いたらその男性がくすりと楽しそうに笑った。

 

「ここら辺りは安くて美味い店多いからな。けどアレだ。都内でももっと中心部行くと色々高いぜ」

 

「へぇ~」

 

「あと夜な。この近辺昼間はいいけど夜は飲み屋街だから。一気に雰囲気変わるぞ。危ないから出歩くなよ」

 

私はパスタをつるりと口に放りながら、その男性をじっと見る。

 

 

「な、何だよ?」

 

「何だか先生みたい」

 

「そう見えるか?」

 

「全然」

 

眼鏡も帽子も妙に今っぽくでメンズファッション誌のお手本みたいな服装だし、チャラそうだし。

 

見た目だけなら完全にちょっと軽そうなショップ店員か美容師さん。

 

て、どちらの職業の方にも失礼な表現かもしれないけれど要するにそんな感じで。

 

ただ妙に目が精悍なのが違和感でもあった。

 

何となく服装と眼鏡の奥の目がアンバランス。

 

 

「にしてもお前……上手そうに食べるなあ」

 

「そう?お腹が空いてたから」

 

私そんなにがっついてたのかなと急に恥ずかしくなる。

 

 

「で?今更だけどお前名前は?」

 

「天道あかねです」

 

「ハイ、失格」

 

「え、何が」

 

「そんなに簡単に見知らぬ男にフルネーム教えるなよ。ここ吉祥寺だぞ?ナンパ野郎も如何わしい店のキャッチも山ほど居るんだ」

 

って自分が訊いておいて注意してくる辺りが何だかーー

 

「やっぱり先生みたい」

 

そう言ったらその男性は苦笑いした。

 

 

「おれは乱馬。早乙女乱馬だ」

 

 

私が東京で初めて出会ったのは、見た目はチャラそうだけどけして根は悪くなさそうな早乙女乱馬だった。

 

 

 

 

「……ここに行きたいって、何で?」

 

不思議な質問だなと思う。

 

 

私は初対面ではあるけれど、この早乙女乱馬と名乗る人に何となく気を許していた。

 

山梨から上京してきた事、この場所に行きたいということを告げてお父さんの手書きの地図を見せたのだ。

 

「そこ私の義理のお兄さんの経営するカフェなの。今日から私、そのお店の上のお部屋に住むのよ」

 

 

「……お前、もしかして高校生?」

 

「うん。見えない?」

 

「や、見えない訳でもねーけど。私服だとどっちか分かんないからな。童顔な大人も居るし」

 

「高校生一年生よ」

 

「……だよな」

 

「何で納得するの?」

 

「や、べ、別に」

 

「じゃあ乱馬は幾つなの?」

 

「おれ?幾つに見える?」

 

 

私は顔をしかめながらタピオカをごくんと飲み込む。

 

 

「そういう質問、面倒臭い」

 

「おい!そういう言い方すんな。お前はもうちょっと年上に敬意を持て」

 

「年上なんだ?」

 

 

乱馬はう、と気まずそうな顔をしてカプチーノを啜る。

 

 

「32才」

「はぁ!?おれ、んなおっさんじゃ……!」

 

 

そこであからさまに不機嫌そうな声を出した乱馬に吹き出してしまった。

 

 

「ごめんなさい。冗談です」

 

「お、お前なぁっ……」

 

「20才?くらい」

 

「24才だ」

 

「……見えない」

 

「仕事の時は変わるさ」

 

 

そうなんだ?

 

でも仕事の時を知らないから嘘か本当かも分からない。

 

 

 

「じゃ、行くか」

 

「え?」

 

「お前の行きたいその場所」

 

「分かるの?」

 

「分かるよ。行くぞ」

 

 

乱馬はさらりとレシートを持ってレジに向かう。

 

私は荷物を抱えて慌てて乱馬の後を追う。

 

 

「ま、待って私も払う!」

 

「いーから。お子ちゃまは黙ってなさい」

 

 

お、お子ちゃま?

 

ムウッとしながらお財布から750円を出して乱馬にグイグイ押し付けようとするが、全く受け取ってくれない上に、私のお財布を見て吹き出された。

 

 

「豚の財布てお前」

 

「な!何よ!悪い!?今流行ってるんだから黒い子豚のPちゃんグッズ」

 

 

「山梨だけで、じゃねえのか?」

 

「失礼ねっ!バカにしてるの!?」

 

 

かぁっと顔の温度が高くなる。

 

本気で怒れば怒る程、何故か乱馬は楽しそうに笑う。

 

 

「いいじゃねえか、それ。お前らしくて」

 

「どういう意味よ?」

 

「十代からブランドもん持ち歩いてるそこらの高校生より、好きだって言ってんだよ」

 

 

「……え」

 

「……あ、好きだってアレだから。良いって意味だから。お前期待すんなよ?」

 

「してないわよっ!」

 

期待じゃないけどドキリとしてしまった。

 

特別な意味がなくても、さらりと『好き』なんて言えちゃうのはやっぱりチャラい。

 

 

とにかく色々バカにされて悔しい。

意外と口が悪いという事が分かった。

 

 

それでも憤然としながら付いて行く。

 

口は悪いけれど、チャラそうだけど、根は親切そうだというのを感じたからだ。

 

結局、お金は受け取って貰えなかった。

 

 

 

リュックを背負い、ガラガラとキャリーケースを引きながら乱馬の後を追う。

 

さっきの公園を通り抜けて、住宅街に出る。

正直、正しい道順はその先分からなかった。

 

乱馬が狭い路地をぐんぐん入ったりしていたし、私も物珍しくてキョロキョロしていたからだ。

 

そうしてようやく辿り着いた。

 

古い木造の洋館を改造して作られた義理のお兄さんのカフェ。

 

画像で見たことはあったけど、実際目にすると本当に素敵だ。

 

入り口はウッドデッキになっていて、色形が様々な陶器の鉢に、観葉植物やお花が煩くない程度に上品に飾られている。

 

きっとお姉ちゃんの趣味だ。

 

 

「じゃ、おれはこれで」

 

乱馬は案内を終えるとあっさり立ち去ろうとした。

 

「え、あ、でも私何もお礼してないから、ここで何か飲み物ご馳走させて」

 

「お子ちゃまの癖に逆ナンか?」

 

「違うわよっ!ただのお礼!」

 

 

ムキになった私の顔を見て、乱馬は満足そうにニッと笑った。

 

 

「礼はいらねーよ。お前と話すの面白かったし」

 

「……あ、ありがとう……あとご馳走さまでした」

 

 

何故か分からないけど、少し照れながらもお辞儀をして何とかお礼はちゃんと言えた。

 

何だかんだ良い人だったし、私も楽しかった。

 

 

 

「おう、じゃ、またな。子豚ちゃん」

 

 

 

……前言撤回。

 

 

 

「……だ、誰が子豚よー!!」

 

 

振り返った乱馬は楽しそうに笑って、後ろ手を挙げて去っていった。

 

 

 

 

ウッドデッキに上がると、全面硝子張りのウインドウ越しに店内で忙しそうに動くお姉ちゃんの姿が見えた。

 

私はアンティークな木戸を開いて、顔を覗かせる。

 

 

「あら、あかねちゃん。いらっしゃい」

 

 

私の姿を見たかすみお姉ちゃんは、嬉しそうに笑った。

 

 

「迎えに行かなくて良かったの?なかなか来ないから心配してたのよ」

 

「いい、いい、ちゃんと分かったから」

 

まるで一人でここまで辿り着いた振りをしてしまった。

 

「お、あかねちゃん来たね」

 

カウンターから笑顔で手を振ってくれたのはお姉ちゃんの旦那さん、東風さんだ。

 

「お久しぶりです」

 

にっこりと笑ってお辞儀をする。

 

けれど店内は割と賑やかで二人とも忙しそうだ。

 

 

「あかねちゃんのお部屋に案内してあげたいんだけど、私今ちょっと忙しいから同居人の子に案内して貰うわね」

 

「え、同居?」

 

「同居というかシェアハウスになってるから。もちろんお部屋は別々よ。それにあかねと同じ年の子だから安心して。ここでバイトしてる子なの」

 

「そうなんだ」

 

 

同じ年、と聞いて安心する。

同年代ならあまり気を使わずに仲良くなれそうだ。

 

 

「真之介くーん。ちょっと良い?」

 

 

……え?

 

 

「……はい」

 

 

呼ばれて厨房らしき場所から顔を出したのは少し目の鋭い無愛想な男の子だった。

 

シンプルな白シャツにエプロンを着けている。

 

「今日からあなたと同居する私の妹、あかねよ。よろしくね」

 

 

黙って軽く会釈するその男の子に、私も反射的にお辞儀を返してしまったが、そこでパニックになる。

 

「ま、ま、待って!お姉ちゃん、同居人てこの男の子!?」

 

「そうよ。少し忘れっぽいけどとっても良い子よ」

 

何にも心配なさそうに笑顔のままのお姉ちゃん。

 

「や、そうかもしれないけど」

 

「あともう一人居るのよ」

 

「え……ま、まだ居るの?」

 

 

三人ならまだ大丈夫?

大丈夫なのかな。

 

私はパニックで頭がぐるぐると回っている。

 

とにかくお姉ちゃんも東風さんも凄くお人好しで、どこか浮世離れしている。

 

まあ浮世離れしているのは、うちの家族のカラーみたいなものかもしれないけれど。

 

 

「あの、その人は……」

 

「男性よ。東風さんの大学の後輩」

 

 

また男性!?

 

私はくらくらとする。

ただでなくてもあまり男性は得意じゃないのに。

 

 

でも東風さんの後輩なら、大丈夫なのかな。

 

 

「じゃあ真之介くん、悪いけどあかねをお部屋に案内してもらえるかしら。簡単にお部屋の説明もしてあげて」

 

こくりと素直に頷いた真之介くんと呼ばれた男の子は、私を一瞥してゆっくりと歩き出す。

 

私はキャリーバッグを持ち上げて、真之介くんの後に続く。

 

厨房の裏口から外に出ると、狭い裏庭から二階に続く階段があった。

 

 

「普段出入りする時は店の正面じゃなくて、こっちからだ」

 

裏庭を囲む柵のドアを開いて、道路を見せてくれる。

 

「分かったわ」

 

「玄関は二階。鍵は共用」

 

階段を上がる前に、真之介くんはさっと私のキャリーバッグを持ってくれた。

 

 

「だ、大丈夫。持てる」

 

慌てて断ろうとしたらもう三段くらい先に居て、間に合わなかった。

 

 

部屋に入ると玄関。

 

玄関からの廊下の間にお風呂とトイレがあると真之介くんが説明してくれた。

 

その廊下の奥にはリビングとオープンキッチンがあった。

 

内装は外装やカフェと統一されているのかアンティーク風で、床も壁もチャコールグレイの木目調。

 

オープンキッチンはまるでグルメ番組で見たバルの様にお洒落だし、ソファーセットはかなり古びていたけれど皮張りで柔らかい座り心地だった。

 

「共有スペースはここだけだ。冷蔵庫に入れるものはマジックで自分の名前書いて」

 

「はい」

 

「料理は各自自由にだけど、基本おれは夕飯は賄いだし、あんたも妹さんだからかすみさんたちと食うのか?」

 

「う、うん。そうかな」

 

初対面から料理が下手とは言えずに私は濁して頷いた。

 

 

「ならあんまり使うこともないかもな」

 

「そっか」

 

「で、お前の部屋はここだ」

 

リビングから直接繋がっているドアは二つ。

 

左側と右側にある。

右側のドアが私のお部屋らしい。

 

ドアを開くとけして広くはないけれど、家具は既に揃えられていた。

やはりアンティークなデザインのベッドとデスク。

 

壁紙は落ち着いたグリーンと白のストライプで白の方は小花柄になっている。

 

ベッドカバーはキルティングで何だか赤毛のアンのお部屋みたいに可愛い。

 

「わぁぁ、可愛い……!」

 

 

嬉しくて叫んでしまう。

目まぐるしく辺りを見回していると、真之介くんはその部屋の入り口にキャリーバックを置いてくれた。

 

「あ、ありがとうっ。ずっと持たせちゃってごめんね」

 

すっかり忘れて持たせていた事に恥ずかしくなり慌ててお辞儀をすると、初めてそこで真之介くんが笑った。

 

ちょっと目つきが怖いと思っていたけれど、笑うと結構穏やかに見える。

 

 

「真田真之介だ。よろしく」

 

「天道あかね。よろしくね」

 

「じゃあおれ、バイトに戻るから」

 

「うん、ありがとう」

 

 

その背中を見送りながら少しほっとしていた。

 

最初は男の子と聞いて心配していたけれど、素っ気ない感じで女性にチャラそうなタイプではなさそうだ。

 

 

その後私は荷物整理に必死だった。

明日からは新しい高校に通わなくちゃならない。

 

 

夕方近くに何とか整理を終えて、少し汗をかいたのでお風呂に入ることにした。

 

さっき真之介くんが説明してくれた話ではお風呂は24時間沸いている循環タイプなので便利で嬉しい。

 

脱衣徐のドアノブに何故かピエロのニット人形が掛かっていた。

しかも背を向けて。

 

 

 

何だろうこれ?

お姉ちゃんが掛けたのかな?

 

 

不思議に思いながらも、私はドアを開けて脱衣所に入る。

 

鍵がかけられないドアらしい。

真之介くんが戻ってくるまでに上がった方が良さそうだ。

 

私は急いで服を脱ぐと、そのまま全裸でガラリとお風呂のドアを開いた。

 

その瞬間に誰かが湯船から立ち上がったのが見えた。

 

まず人が居ることにびっくりして立ち竦んだ。

 

 

向こうは向こうで急にドアを開けた私に驚いて立ち竦んでいた。

 

互いに互いの姿を茫然と見る。

 

 

私の視線の先に居るのは裸のお下げ髪の……股間が見えて完全に理解する。

 

男性だった。

大人の男性のそこを私は見てしまった。

 

衝撃過ぎて息が止まり声が出ない。

 

カラカラと静かにドアをしめて服をゆっくりと着た。

 

 

そうして何とか外に出ても大丈夫な服装になった瞬間に、さっきの見てしまったものが頭に浮かんで、とてつもなく大きな悲鳴を上げた。

 

 

「あ、ピエロの事言うの忘れてた……」

 

 

真之介くんがカフェでそう呟いたのは、私の悲鳴とほぼ同時だったらしい。

 

 

 

 

 

リビングにはむすっとした顔でバスタオルを肩に掛け、ハーフパンツ姿でどかりとソファーに座っている男性が居る。

 

私はその男性から顔を背けて怒りをあらわにしている。

 

 

駆け付けた東風さんと真之介くんは、そのただならぬ空気を察した様だった。

 

 

「東風さん!何なのこの変態男!?」

 

「おい!誰が変態だ!!」

 

「私の裸見たじゃない!」

 

「お前が勝手に入って来たんだろうが!おれは被害者だぞ!」

 

「女の裸見といて何が被害者よ!」

 

「ほら見ろ!ちゃんとピエロ反対になってるだろうが!!」

 

そこで私はピタリと止まる。

 

「ピエロ?」

 

「そうだよ!風呂入ってる時はこのピエロ背中向きにしてんだよ!」

 

「そんなの知らない……!」

 

「ごめん、あかね。おれが伝えるの忘れてたんだ」

 

 

真之介くんが申し訳なさそうに、割って入る。

 

 

「そ、そうなの……?」

 

「ああ、だから悪いのはおれだ」

 

「ほら見ろよ!おれ被害者だろ!なのに変態変態騒ぎやがって」

 

「でも裸見たのは本当じゃない!じっと見てた!」

 

「そりゃびっくりして動けなかっただけだ!大体お前みたいなお子ちゃまの裸なんか見たって何とも思わ」

 

言い切られる前に頭に来てビターンと頬をビンタした。

 

「ってえな!この子豚!」

 

 

 

 

ん?

……子豚?

 

 

 

私はそこで初めてその男性の顔をじっと見る。

 

変態の癖に精悍そうな目。

どこかで見たことがある。

 

というかさっき、見たばかり。

 

 

イメージでその目に眼鏡をかけて、ニット帽をかぶせてみる。

 

 

 

「ああ!!早乙女乱馬!!」

 

「……よーやく分かったか!この恩知らず!」

 

 

「ん?二人は知り合い?」

 

 

東風さんは私と乱馬の顔を見合わせながら首を傾げていた。

 

まさか乱馬が東風さんの大学時代の後輩だなんて思いもしなかった。

 

 


あとがき

なるべく短くこまめに更新したいけれど初回はやはり色々書きたい事が詰まって長くなってしまいましたw

これでも分割しておりますw吉祥寺を舞台にしたらこう私が好きな渋いらんまの世界感はなくなっちゃったけど、パラレルだからそれはそれで楽しんで頂けたらと思います。次回以降はもっとさっくり短くまとめたい……です。